弁護士・税理士・司法書士・行政書士・社会保険労務士の事務所さま向け
広告費は毎月出ていくのに、相談の数が変わらない。このご相談で私たちが最初に確認するのは、管理画面で何を目標に設定して回していたかです。リスティング広告(検索結果に出る運用型広告)は機械が配信を最適化する仕組みで、機械は設定された目標に忠実に動きます。目標をクリックに置けば、予算はクリックに使い切られます。私たちは、事務所の売上に直結する目標、つまり受任から逆算して設定を組み直すところから入ります。
最終更新:2026年8月14日
士業の広告には、他の業種と違う事情がひとつあります。案件ごとの単価差が大きいことです。相続の大型案件と、数万円で終わる手続きの相談が、広告の管理画面では同じ「1件」として記録されます。この状態で問い合わせの増減だけを見ていると、事務所の売上と広告の数字が別々の方向へ動き出します。以下では、その歪みをどこで止めるかという順序で書きます。
実例
「クリック数最大化」のまま回り続け、約38万円がクリックだけに変わっていた
当社が引き継いだ税理士事務所の広告アカウントでは、あるキャンペーン(=広告の配信単位)が約1年で約38万円を消化し、クリックは約1,300件集まっていました。コンバージョン(=問い合わせや電話などの成果)は0件です。入札戦略(=機械に何を最大化させるかの指示)が「クリック数最大化」のままで、コンバージョン計測が機能していない状態が続いていました。単一のキーワードで約2.2万円を消化してコンバージョン0という例も、同じアカウント内にありました。
広告が溶けるとき、機械は指示どおりに動いている
上の例で起きていたのは、設定どおりの結果です。「クリック数最大化」はその名のとおりクリックを最大化する入札戦略で、コンバージョンが計測されていなければ、機械には成果の良し悪しを判断する材料がありません。約1,300回のクリックは、与えられた指示への忠実な回答でした。
ここを最初に確認する理由は、後工程の改善がすべてこの上に乗るからです。広告文を書き直しても、キーワードを入れ替えても、目標の設定が実態とずれていれば、機械はずれた方向に予算を運びます。
もうひとつ、掲載順位が入札額だけで決まらないことも押さえておく必要があります。Googleは広告ランク(=掲載順位と実際のクリック単価を決める内部の評価)の決定要素として、次の6つを挙げています(出所:広告ランクについて|Google 広告 ヘルプ)。
- 入札単価
- 広告とランディングページの品質
- 広告ランクの下限値
- オークションにおける競争力
- ユーザーが検索に至った背景(検索語句・所在地・デバイス・時刻など)
- 広告アセットやその他の広告フォーマットの効果
着地先のページを整えることは、広告のクリック単価を下げる作業でもあります。 品質の評価が低ければ、同じ順位を取るのに必要な単価は上がるためです。
そこで、引き継ぎ時には次の3点を確認します。
1. 何が計測されているか — 問い合わせ・電話が成果として記録されているか 2. 入札が何に向いているか — クリックを買う設定か、成果を買う設定か 3. 着地先がその意図に応えているか — 広告で約束した内容がページにあるか
この3つが噛み合っていない状態では、運用の巧拙を議論しても数字は動きません。
問い合わせ単価で見ていると、判断を誤る
代理店に「問い合わせ単価は3万円以下でお願いします」とだけ伝え、受任したかどうかは事務所の中に留めている。この運用は、私たちが引き継ぐアカウントでよく見かけます。悪意があるわけではなく、受任情報を外に出す発想がなかっただけ、という場合がほとんどです。
ただ、この状態だと配信の質は上がりません。機械が学習に使えるのは問い合わせまでで、その先の受任は視界の外にあるためです。結果として、問い合わせを取りやすいキーワードに予算が寄っていきます。
問い合わせを取りやすいキーワードが、受任しやすいキーワードとは限りません。当社代表が出演した番組で紹介されている弁護士事務所(離婚分野)の例では、運用の改善によって問い合わせ単価が約4万円から約2万円に下がった一方、受任単価は約12万円から約15万円に上がっています。1事務所の事例で、同じ結果になるとは限りません(出所:【2026年最新】AIの台頭で弁護士事務所が潰れまくる!?|WebマーケティングTV。当社代表が出演し、運用の構造を解説した回)。安い問い合わせが増えたぶん、受任に至らない相談の比率が上がったためです。広告の管理画面の上では改善に見えて、事務所の売上では悪化しています。
そこで私たちは、KPIを受任単価に置きます。順序としては、顧客の年間売上や、取引が続く期間全体の売上(生涯価値)から逆算して「1件の受任にいくらまで払えるか」を先に決め、その金額以下で獲得できるキーワードはどれかを検証します。上限を先に決めるため、広告費が想定外に膨らむことも抑えられます。
実務上は、問い合わせ・資料請求・入電といった実際のコンバージョンと、フォームへの遷移や電話ボタンのタップといった手前の行動(マイクロコンバージョン)を分けて設計します。士業の広告は月あたりのコンバージョン数が二桁に届かないことも多く、実際のコンバージョンだけでは機械の学習に足りないためです。
いまの広告費が、どこに使われているかを確認します
管理画面をご一緒に見て、計測の状態・入札の設定・キーワードごとの消化を切り分けます。その場で運用のご契約をお願いすることはありません。
実例
リード単価が下がっても、それは「安く取れるようになった」ではない
相続分野の士業グループで、Meta広告をサイト誘導からフォーム内蔵型のリード獲得広告へ切り替えたところ、リード単価は約1,000〜1,600円になりました。同じ時期、Google検索広告経由の問い合わせ単価は約2万円前後です。Meta広告で取得できるのは関心の段階が浅い連絡先で、検索広告に入ってくるのは自分で課題を検索して問い合わせてきた相談でした。同じ「1件」として並べると、媒体の評価を誤ります。
媒体ごとの「1件いくら」を、横に並べない
上の実例に出てくる2つの数字は、どちらも「1件あたりいくら」という同じ単位で書かれています。ただし、数えている「1件」の中身が揃っていません。
| 比べる軸 | 検索広告(Google) | SNS広告(Meta) |
|---|---|---|
| 相談者の段階 | 課題を言語化して自分で調べている | 課題は感じているが動き出していない |
| 実測の取得単価 | 問い合わせ 約2万円前後 | 連絡先 約1,000〜1,600円 |
| そのまま横に並べられるか | 同じ「1件」でも中身が違うため不可 | 同左 |
| 揃えて見るべき指標 | 問い合わせ→受任の率 | 連絡先→面談の率 |
単価だけを見ると「検索広告は高い」という結論になり、逆の見方をすれば「SNSは質が悪い」になります。どちらも媒体の性質を単価に押し込んだ誤読です。比べるなら、面談や受任まで揃えます。
士業でSNS広告を使う場面は限られます。当社が外国人の在留資格を扱う行政書士事務所で試したときは、SNS広告からは無料相談を目的とした反響が中心で、受任につながる相談は集まりませんでした。そこで検索広告に切り替え、入口を「国際結婚」「配偶者ビザ」に絞っています。検索しているのは外国人本人よりも日本人の配偶者であることが多く、日本語でのやり取りが前提になるという読みからです。
媒体の選択は、予算配分より前に「誰が、どの段階で、どの言葉で探しているか」を決める作業になります。ここを飛ばして両方に出稿すると、単価だけが並んだ表が残ります。
キーワード選定は「どの判断軸の顧客を呼ぶか」の選択
同じ分野でも、キーワードによって集まる相談者の判断基準が変わります。当社代表が広告運用の経験から挙げている例では、「相続 弁護士」より「相続専門弁護士」で検索した人のほうが成約に至る比率が高く、予算が限られる事務所には一般的なキーワードを外して専門性の入ったキーワードに寄せる提案をすることがあります(出所:【2026年最新】AIの台頭で弁護士事務所が潰れまくる!?|WebマーケティングTV)。どの程度差が出るかは、分野・地域・予算規模によって変わります。
ここで区別が要ります。そのキーワードで検索している人に広告を出すことと、広告文やサイトに「専門」と表示することは別の話です。 「専門」やスペシャリストといった表示の扱いには所属会のルールがあり、士業によって考え方が違います。キーワードの選定はそのまま進められますが、表記に反映する場合は所属会にご確認ください。士業別の扱いはコラム「士業の広告完全ガイド」にまとめています。
検索数が多くて一見魅力的な「費用」「相場」を含むキーワードは、扱いに注意が要ります。価格を基準に探している人は、専門性を訴求しても最終的に価格で選ぶ傾向があるためです。低コストで回せる体制を持っている事務所であれば主戦場になりますが、そうでなければ訴求と集まる層がねじれます。
予算が小さい段階では、狙う範囲をさらに絞ります。当社が士業向けにまとめた資料では、最初に出稿するキーワードを次の3種類に限定しています。
- 事務所名などの指名検索
- サービス名 × 地域名
- 悩み × 地域名
「〇〇とは」のような情報収集段階の検索には、この段階では出しません。あわせて、次の語を除外キーワードとして最初に登録します。
- 無料/格安
- 求人/採用
- ブログ
- 自分で/方法
これらを外さないまま配信すると、予算が調べ物の閲覧に消えます。キーワードごとの選び方と、士業別の広告規制については、コラム「士業の広告完全ガイド」で網羅的に整理しています。
私たちの広告支援に含まれるもの
成約から逆算したキーワード評価
コンバージョンの件数でキーワードを評価するのをやめ、受任に至ったかどうかで評価します。実務としては、媒体上でコンバージョンが記録された時刻と、事務所側の受任記録を突き合わせ、どのキーワード経由の相談が受任につながったかを特定していきます。この突き合わせのために、受任データの共有をお願いしています。共有いただくのは受任の有無と日時、案件の分野までで、相談者が特定できる情報は必要ありません。
初動は1媒体に絞ります。同時に複数の媒体を動かすと、どの経路が効いたかを切り分けられないまま予算だけが分散するためです。
媒体に学習させるデータの設計
初期設計は、次の5つで決まります。
1. キーワード選定 2. アカウント構成 3. 広告文 4. 入札戦略 5. 設定時の確認項目(配信エリア・デバイス・除外キーワードなど)
キャンペーンの分割は、単体で月30件以上のコンバージョンが出るようになってから検討します。それ以前に細かく分けると、1つあたりのデータ量が減って学習が進みません。
入札戦略も段階を踏みます。コンバージョン数の最大化から始め、件数が安定してから目標コンバージョン単価、さらにコンバージョンの価値を扱う戦略へ、という順序です。Googleは、コンバージョンの価値を扱う入札(目標広告費用対効果)を検索広告で使う要件として、過去30日間に15件以上のコンバージョンを挙げています(出所:目標広告費用対効果に基づく入札について|Google 広告 ヘルプ)。当社が段階を上げる目安にしているのは30日で30件以上で、この公式要件より厳しめに置いています。士業では、この件数に届く前の期間をどう設計するかが実際の論点になります。
受け皿の運用
広告からの着地先は、キーワードやターゲットに応じて出し分けます。問い合わせフォームの項目数、電話番号の見せ方、送信後の案内といった細部も、コンバージョン数に影響する範囲として扱います。冒頭に書いたとおり、着地先の品質はクリック単価にも関わります。
毎月お渡しする数字と、その根拠
報告するのは、消化額と件数だけではありません。どのキーワードにいくら使い、そこから何件の相談が入り、そのうち何件が受任に至ったか。数字が動かなかった月は、動かなかったという事実と、次に何を変えるかをお伝えします。
出せる表現の線引きは、誰が決めるのか
士業の広告表現は、所属会の会則・会規(および業法の委任)にもとづく規制の対象です。定めの内容は士業ごとに違い、改定もされます。 会によっては、事実であっても表示できないとされている事項があります。
私たちが行うのは形式面の確認までです。掲載してよいかどうかの判断は行いません。配信前に、広告文と着地先のページへ次の観点で目を通し、論点になりそうな箇所をお示しします。
- 数値や実績の主張に、裏づけとなる計測条件がそろっているか
- 他の事務所と比較する記述になっていないか
- 順位や最大級を主張する表現が入っていないか
- 不安を過度にあおる書き方になっていないか
- その士業で表示できないとされている事項が入っていないか
これらは媒体側の審査でも否認されやすく、配信前に止まることがあります。
そのうえで、可否の最終判断は所属会への照会をお願いしています。士業ごとの規制の中身(規程名・禁止類型・表示できない事項)は、コラム「士業の広告完全ガイド」の該当章にまとめています。
※本解説は2026年8月時点の規程に基づくものです。広告可否の最終判断は、必ず所属の士業会にご確認ください。本章はマーケティング実務の観点からの整理(監修)であり、法的助言ではありません。
費用の考え方(媒体費と運用費を分けて見る)
広告の費用は、媒体費と運用費に分かれます。媒体費はGoogleやYahoo!に直接支払うクリック課金の費用で、運用費は設計と運用に対して当社にお支払いいただく費用です。管理画面の消化額として見えるのは前者だけなので、最初にこの2つを分けてご説明しています。
媒体費の目安は月10万円以上です。これは当社が士業向けにまとめた資料で推奨している水準で、これを下回ると1日あたりの表示回数が少なくなり、どのキーワードが効いているかを判断できるだけのデータが集まりにくくなります。また、月間の検索回数が100回に満たないような狭いキーワードだけでは、広告の効果は出にくくなります。士業では地域名との掛け合わせで検索数が小さくなりがちなため、この点は最初に確認します。手法別・士業別の相場感はコラム「士業の広告完全ガイド」にまとめており、事務所ごとの上限額は無料相談で計算しています。
広告運用単体の月額プランは設けていません。 広告は、着地先のページと計測が整っていて初めて成立するため、その部分を切り離して請け負う形にすると成果の責任範囲が曖昧になります。ホームページやSEOと合わせて設計する場合は、複数のチャネルをまとめた体系でのご提案になります。必要な範囲は事務所によって変わるため、無料相談で現状をうかがったうえでお見積もりをお出しします。
ご相談の際は、次の3点をうかがえると精度が上がります。
1. 現在の広告費と、その配分 2. 受任1件あたりの平均的な売上 3. 問い合わせから受任までの歩留まり(=何件の相談のうち何件が受任に至るか)
この3つがあれば、上限として置ける獲得単価をその場で概算できます。
この支援を担当する人

炭田 一樹
株式会社サイダーストーリー 代表取締役
士業・専門家に特化したWebマーケティング支援を行っています。SEO・LLMO(生成AIの回答に取り上げられるための対策)・Web広告・ホームページ制作を、戦略の設計から実行まで一貫して担当します。毎月の作業内容と、その打ち手を選んだ根拠をそのままお渡しする進め方です。
受任単価から逆算した上限を、その場で出します
現在の広告費・受任1件あたりの売上・歩留まりの3点をうかがい、1件の獲得にいくらまで使えるかを一緒に計算します。そのうえで、いまの運用がその範囲に収まっているかを確認します。
広告運用の進め方(4ステップ)
1. 現状確認:計測が機能しているか、入札が何に向いているか、過去の消化額がどのキーワードに使われたかを確認します 2. 設計:受任単価から逆算した上限獲得単価を決め、キーワード・除外キーワード・入札戦略・着地先を組みます 3. 配信と学習:1媒体に絞って配信を開始し、受任記録と突き合わせながらキーワードを絞り込みます 4. 月次の確認と、続けるかの判断:数字を開示し、続ける・配分を変える・止めるのいずれかを決めます
②までは初月のうちに終わります。時間がかかるのは③で、機械の学習にも受任の集計にも一定の期間が要ります。④を最初から工程に入れているのは、広告が止められる施策だからです。積み上げた資産が残るSEOと違い、続ける判断を毎月やり直せます。
いま出稿中であれば、①は管理画面を見ればその場で終わります。まずはそこからお持ちください。
先に広告を出すべき事務所と、そうでない事務所
| いま決まっていること | 先に置く施策 | 反応が見えるまで |
|---|---|---|
| 受けたい相談分野が決まり、着地先のページもある | リスティング広告 | 数週間 |
| 分野を広げたい/相談の質を変えたい | SEO(記事・情報ページ) | 数か月 |
| 地域で件数を積む業務が中心 | MEO(地図検索) | 数週間〜 |
| 着地先のページがまだない | ホームページの設計 | 制作期間分 |
先に広告を試したほうが早いのは、いま受けたい相談がはっきりしている場合です。狙う分野が決まっていて、着地先のページがすでにあるなら、数週間で反応の有無がわかります。需要そのものがあるかを短期間で確かめられるのは、広告の利点です。
検討期間が長い顧問契約のような業務では、比較検討の期間中に読むものがないと他所へ流れます。この場合は記事や情報ページを先に整えたほうが噛み合います。着地先のページが用意されていない状態で出稿すると、費用が通り抜けるだけになります。
順番はつけますが、どれか1つを選ぶ必要はありません。現在の数字をうかがえれば、どこから着手すべきかは切り分けられます。
まとめ
リスティング広告で最初に決めるべきなのは、何を成果として数えるかです。予算もキーワードも、その後に決まります。士業は案件ごとの単価差が大きいため、問い合わせの件数だけを追うと、事務所の売上と広告の数字が別々に動きます。受任単価から逆算した上限を先に置き、その範囲で獲得できるキーワードを探します。この順序にすると、続けるか止めるかの判断も毎月できるようになります。
いま出稿中であれば、管理画面を見れば計測と入札の状態はすぐに確認できます。まだ出稿していない場合は、受任1件あたりの売上から上限を計算するところからで構いません。
いまの広告費が、どの3つで詰まっているかを30分で見ます
出稿中の方は管理画面を、これからの方は受任1件あたりの売上をご用意ください。計測・入札・着地先のどこから着手すべきかをお伝えします。その場でのご契約はお願いしていません。
よくある質問
※本解説は2026年8月時点の規程に基づくものです。広告可否の最終判断は、必ず所属の士業会にご確認ください。本章はマーケティング実務の観点からの整理(監修)であり、法的助言ではありません。
広告と並行してサイト側を整えた事務所の数値は、事例ページで公開しています。
※個別の事例であり、同様の成果を保証するものではありません。
